ブッシュ大統領の憲法改正声明に対する全米の反応

by 井出

 
 

 ジョージ・ブッシュ大統領が2月24日、同性愛結婚を禁止すべく憲法を改正すると宣言した事に対し、全米のLGBT団体、市民的自由主義者、民主党員らが激怒している。

 ブッシュ大統領は、(同性婚を推進している)政治活動家の判事や地域当局は「文明の最も根本的な制度を護る以外の選択肢はない」という姿勢を崩さず、議会に憲法の改正を求めた。

 これに対し、サンフランシスコ市長のギャビン・ニューサム氏は「アメリカ国民は、大統領の、差別を我々の憲法に盛り込むような決定に対し、悲しまなければならない」と次のように述べた。

 
「歴史の中で、米国憲法は、差別と戦うため、自由を広げるために使われてきた。今日、ブッシュ大統領は、我が国が最も重要視している自由と正義の価値観にことごとくそむくような道を選んだのだ。さらに、率直に言って、私は、この決定でのブッシュ大統領の不誠実さに対して深く憂慮している。この決定によって、次のようなことが明らかになった。ブッシュ大統領は、サンフランシスコ市当局が州憲法を支持すると決めたはるか以前から、自身の共和党右派に対して、差別を憲法に盛り込むことを支持すると約束していたのである」。

 National Gay and Lesbian Task Force(NGLTF:全米ゲイ・レズビアン・タスクフォース)は、ブッシュ大統領のこの宣言は、アメリカの同性愛者に対しての宣戦布告であると語った。

 NGLTF の執行委員長、マット・フォアマン氏はつぎのように話した。「この事態に直面して、この論争が“苦しさ”や“怒り”なしで実行されるべきであるとした、ブッシュ大統領の勧告は、我々の家族、尊厳、市民としてのアメリカ社会への貢献に対する侮辱である」。
「同性婚を平等に認めることによって危害を被る人はいない。マサチューセッツ州の最高裁が、『我々の歴史は、分離などまずなく、平等があるだけだ』と証明している。しかしながら、ブッシュ大統領は、『アメリカの同性愛者は、分離され永久に不平等であるべきだ』と宣言したのだ」。

「我々は、大統領の政治家としての点数稼ぎとして、差別を憲法に盛り込むようなことはすべきではない」American Civil Liberties Union(ACLU: 全米市民的自由連合)のクリストファー・アンダーズ氏はこのように述べ、「このいわゆる『適切な処置』は、もし実現すれば、今まで州や地方自治体単位で認めてきた、同性愛者に対する権利がすべて崩壊してしまうどころではない。これは同性愛者の権利擁護を一瞬にして永久に消し去ってしまう、反同性愛攻撃用核爆弾のようなものだ」と付け加えた。

 GLAAD(中傷と戦うゲイ・レズビアン同盟)執行委員長のジョーン・M・ゲイリー氏は「アメリカは、連日何千というゲイやレズビアンのカップルが喜びいっぱいに、正式な形で婚姻している姿をメディアを通して見ている。それは、ブッシュ大統領が明らかに完ぺきに見逃しているものだ。法の下での真の平等は、アメリカ国民全員が深く切望していることであり、全ての国民にその権利が与えられているのだ」。と話し、「ブッシュ大統領が大統領に就任してほぼ4年経つが、大統領は公的に“ゲイ”“レズビアン”という言葉を一度も使ったことがない。そして、大統領は、そのような家族または存在を認識することを拒み続け、無神経にも差別を憲法に盛り込む事を宣言して、そのような家族を崩壊させようとしている」と付け加えた。

 Human Rights Campaign(人権キャンペーン)のスポークスパーソンであるマーク・シールズ氏は、「同性カップルの権利を否定するために憲法を利用する事は、間違っていて、アメリカ的な考えではない」と語り、「歴史は、アメリカ国民の権利を否定するような輩を評価するようなことはない」と付け加えた。

 Human Rights Campaign(人権キャンペーン)代表のシェリル・ジャック氏は声明の中で、「憲法改正は、今までは自由と平等を確立するために行われてきた。女性に選挙権を与えるための憲法改正がいい例である。しかしながら、この改正は、憲法に差別を明記する最初のケースになるだろう。アメリカ国民が今後、醜くそして差別的な政治的陰謀をその目で見ることになるかと懸念している。アメリカ国民は、大統領が自分は『divider(分離させる人)』ではなく『uniter(統合させる人)』であると約束した事を覚えているか。今日、大統領はその約束を破る事になるのだ」と述べた。

 LAMBDA Legal Defense and Education Fund(ラムダ・リーガル弁護教育基金)は、この憲法改正によって全米の何百、何千の家族から重要な権利が剥奪され、さらに、何世紀にも渡るアメリカの民主化の過程から権利保障を探し出すことさえ、妨げられる事になりかねないと、話した。

 そして、ラムダ・リーガルの上級顧問ジョン・デイヴィッドソン氏は「12日前サンフランシスコで、一般のレズビアン/ゲイが結婚し始めた時に、抽象的な論争に終止符が打たれたのだ」と語った。「結婚した同性カップルは、もはや、国を脅かすお化けのような存在ではなくなった。同性愛者はリアルな人間として、婚姻だけが与えられる権利保障に対するリアルなニーズをみたした。このことはアメリカ国内では初めての事である。サンフランシスコは、愛し合う同性カップルが平等な扱いを受けた時に誰も被害をこうむることはなく、結婚した同性カップルが脅威とは決してならないことを国民に伝え続けていくことで、そのような同性愛者に対して差別的な改正案を打倒する」。

 PFLAG(レズビアンとゲイの親、家族、友人)の執行委員長、デイヴィッド・ツェン氏は「人種隔離政策の日々が、国をして、そのような恥ずべき形で法律に差別を書き入れるといったような事態に直面させたわけではない」と述べた。さらに「何百万人ものアメリカ国民は、ジョージ・ブッシュが、私たちの尊敬すべき憲法に憎悪を書き込むようにという政治的圧力に屈したことに失望している」と続けた。

 民主党員の同性愛者で構成される最大の団体「ナショナル・ストーンウォール・デモクラッツ」の執行委員長、デーブ・ノーブル氏は、「ブッシュ大統領は、家族というものが反同性愛の土台の前に投げ出せる政治的“赤肉”以上のものだと理解していない」として、「大統領は、私たちのコミュニティがこの男に反対票を投じるだけではもうすまないことを示した。私たち一人ひとりが、ブッシュを次の大統領選で落選させるべく活動しなければならない責任がある」と語った。

 ゲイの共和党員も同様に、ブッシュ大統領の憲法改正案について非難した。共和党員の同性愛者で構成される最大の団体「ログ・キャビン・リパブリカンズ」委員長の パトリック・グエリエロ氏は、「保守的な共和党員として、我々は、この選挙年に自らの政治的なポイントを稼ぐために、我々の神聖なる憲法を使う我が党および国のリーダーに対して、とても憤慨している。ログ・キャビン・リパブリカンズの力量を駆使して、反家族的な憲法改正と戦うことを、かつてないほど強く決心している」と述べた。

 マサチューセッツ州の上院議員であるエドワード M. ケネディ氏は、この大統領の宣言は、大統領選でのブッシュ大統領の再選を絶望的にさせるものになるだろうと述べた。ケネディ氏は、同性婚には反対しているが、ブッシュ大統領の憲法改正案にも反対している。「ブッシュ大統領が原因で、イラク戦争、雇用と経済、健康管理、教育、その他さまざまな問題が悪化し、今回の選挙戦では八方ふさがりの状態の時に、ブッシュ大統領は、自分の選挙戦を救うためのやけっぱちな作戦において、偏見に訴えている」。

 ケネディ氏は、ブッシュ大統領の、改正してもシビルユニオンなどを各州が認める際の妨げにはならない、という発言も強く非難した。「憲法改正支持者は、改正しても各州政府が同性カップルに法的権利を与える際の妨げにはならないと主張している。しかしながら、それは改正案で述べられていることではない。同性愛者が婚姻でおこる法的な事項を受けることを禁止することによって、改正案は、州や地方自治体独自で定めたドメスティック=パートナーシップやシビルユニオンといった同性愛者同士を結び付ける法律や、またそのような事とは関係のない法律を含めた、法律を裁判所が執行する事を禁止することになるだろう」。

《参考》ブッシュのコメントの全文はこちらから

翻訳&記事の解説:井出
(井出:神奈川県在住/翻訳スタッフ)

 

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