より差別を受ける米国のゲイの若者

by 石田

 6月29日(火曜日)に発表された新たな研究によると、ゲイやバイセクシュアルの若い男性は、より高い年齢層と比べると、かなり多くの同性愛者差別的な暴力や嫌がらせを経験している。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者たちは、18歳から27歳のゲイ男性を対象とした研究から、21歳以下の男性が最も多くの暴力や嫌がらせを受けていることを示した。

 さらに、「最も懸念すべき」結果の一つと研究者たちがみなすのは、同性愛者差別的な暴力や嫌がらせを経験した男性は、そうでない男性よりも、自尊心や自己評価が低く、2倍の確率で真剣に自殺を考えた、と答えている点だ。

 「人生の中での精神的にストレスの多い出来事によって、人は自殺願望を含めた様々な肉体的、精神的な病気になってしまうことは分かっています」と、UCSFエイズ予防研究センターの心理学者であり、今回の研究の指導的立案者であるデイビッド・ヒューブナー博士は言う。

 「今回の研究結果は、同性愛者に対する差別的行為が同性愛者を自殺に追いやるのに十分な精神的ストレスを与えている可能性を示しています。これはとても悲しいことです」と、ヒューブナー博士は語った。そして、「大統領が、差別を憲法の中に制度化をすることを薦めているような時代では、そのような行為が重大な結果をもたらすということを私たちが理解することが重要です」と彼は、同性婚を禁止するための連邦憲法改正(FMA)を支持するブッシュ大統領に関連付けて言い加えた。

 この研究ではアメリカの東南にある3つの都市(アリゾナ州フェニックス、テキサス州オースティン、ニューメキシコ州アルバカーキ)に住む1248人のゲイとバイセクシュアルの男性を対象に、同性愛者であることを理由とした暴力や嫌がらせ、差別の実態が調査された。研究結果は、7月1日(木)に発行された科学雑誌“the American Journal of Public Health”に掲載されている。

 3分の1以上の男性が同性愛を理由に嫌がらせを受けており、また11%が差別行為を、そして5%が暴力行為を経験したと訴えている。そして、カミングアウトをしているかHIV感染者である、18歳から21歳までの男性からのそのような報告がもっとも多かった。21歳以下の10%が暴力を受けた経験があり、半数が嫌がらせを受けたことがあった。

 また、HIV感染者の4人に1人は同性愛者差別を受けており、21歳以下の感染者では14%が差別を受けた事実を報告している。

 「若者やHIV感染者といったより弱い立場の男性たちが、同時により差別や嫌がらせ、暴力を経験しているという事実が分かり、とても残念に思っています」と、ヒューブナー博士は言う。「私たちの研究結果は、そうした人たちに対して、安全な社会環境を創り出し、差別に直面した時にサポートをするための、エンパワーメント(内面にある力を引き出すこと)やコミュニティを作るプログラムの必要性をも例証しています」。

 また、この研究は初めて多くの異なる民族からのデータを基にした、最初の研究の1つである。60%が白人、30%がラテン系、18%が21歳以下、となっている。しかし、シカゴ地区で最近起こった相次ぐ殺人事件からも分かるように、若者でなくとも憎悪犯罪の対象となる可能性はまだ残る。

 6月29日に、フォレスト・クローリー(44歳・男性)の遺体が、去年2人のゲイ男性が殺害されたのと同じ地区から発見された。去年の犠牲者であるブラッド・ウィンターズ(38歳)とケビン・クリューワー(31歳)は、ともに身体を数回にわたり刺されており、人権活動家たちは、これらの事件を同性愛者差別的な殺人であると確信している。

 ゲイであることを理由とした暴力事件は、多くの人にとっては認めたくない、アメリカのゲイライフの現実を浮き彫りにさせている、とヒューブナー博士は語る。

 「同性愛者やより一般的な異性愛者の間では、このようなことは10年、15年前の出来事だと信じ、今は“Will and Grace*の時代であり、このような事件は起こりえないと考える傾向にあります。しかし、それは全く真実ではないのです」

*アメリカのコメディドラマ。邦題は「ふたりは友だち? ウィル&グレイス」。ニューヨークを舞台に、同性愛者の弁護士ウィルと、インテリアデザイナーのグレイスのライフスタイルを描いたもの。アメリカでは1998年からNBC系列で放送され、2000年にはエミー賞コメディ部門で最優秀作品賞を受賞した人気ドラマ。文中では同性愛者が社会で普通に受け入れられている象徴として用いられている。

翻訳&記事の解説:石田 京介
(石田 京介:カナダ在住/翻訳スタッフ)

 

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