米国上院で憲法婚姻修正案の討論が始まる

by ワタル

 政治的策略だという非難があるにもかかわらず、米国上院では先週金曜・7月9日から、連邦憲法婚姻修正案(FMA)に関する討論が始まった。この修正案は、全米で同性婚を禁止すべく憲法を修正する狙いがある。

 この修正案の上院発起人代表、上院議員のウェイン・アラード氏(共和党、コロラド州)は、討論の始めに「今日私たちがここにいるのは、伝統的な結婚が危機にあるからだ」と語った。「法廷を発端としたこの危機は、多くの国民の意志に真っ向から対峙したものだ」。

 上院院内総務のビル・フリスト氏(共和党、テネシー州)は、「オランダでは、97年に事実上の同性婚を認めてから、婚姻外出生の子供の割合は3倍にもなっている」と主張した。

 上院議員のオリン・ハッチ氏(共和党、ユタ州)は、「このようなことに時間を使うより、もっと他に議論をすべきことがあるはず。同性愛者でも彼らの選んだ人生を生きる権利があるが、彼らに結婚を再定義する権利はない。また、私たちは結婚や、伝統的生活や価値観などを、子供たちに伝えていかなければならない」と発言。

 しかし、上院議員パトリック・リーヒー氏(民主党、バーモント州)は、この討論が政治的利益のために使われていると共和党を非難した。「この討論は間違っている。キャンペーンのスローガンに使われるために、米国憲法があるわけではないはずだ」。

 民主党の主張では、保守派の層を取り込み、経済や自国の安全保障問題から注意をそらせようとする政治的意図があるとして、共和党を非難している。

 ブッシュ大統領は、ペンシルベニア州を遊説中の先週金曜・7月9日も、この修正案への支持を繰り返し述べた。「彼らが自分たちのプライベートな場所ですることは、お互い同意した大人であれば容認されるべきだ。なぜなら、ここは自由の国、アメリカだからだ。しかし、伝統的な結婚を再定義しなければならないということではない。私は結婚の神聖さを信じる」。

 ブッシュ大統領は、マサチューセッツ州最高裁が同性カップルの婚姻する権利を認める判決をし、サンフランシスコで同性愛者に結婚許可書の発行が開始されたのを受けて、今回の修正案への賛成を呼びかけた。

 しかし、共和党首脳部が非難されているのは、民主党上院議員のジョン・ケリー氏(マサチューセッツ州)が民主党大統領候補の資格を受ける前にこの結婚問題をぶつけようと、修正案への投票を仕組んだとされているからだ。

 民主党全国大会は7月26日から29日にかけてボストンで開催される予定。ケリー氏と副大統領候補であるジョン・エドワーズ氏は、共にこの修正案への反対を表明している。

 「ナショナル・ストーンウォール・デモクラッツ」(民主党の同性愛者団体)のコミュニケーション・ディレクターのジョン・マーブルさんは「共和党はただ単に政治的な理由からこれを始めたのです。つまりブッシュ大統領を再選させるためです。そうはさせませんが」。

 「上院下院の共和党議員は、この修正案を通すだけの票がないことを知っています」とマーブルさんは政治新聞Roll Call の記事を引き合いに出した。この記事では、共和党上院院内総務のビル・フリスト氏が、この案を通過させるために必要な67の票を得るのは難しいだろうと認めた、と報告している。
 「議会が休会するまで、あと2週間しかありません。他にも投票を要する法案があるのです。テロ対策への資金提供や経済強化に関する法案などがそうです。通過しない法案で遊んでいる暇はないはずです」。

 「人権キャンペーン」のコミュニケーション・ディレクター、スティーブン・フィッシャーさんはマーブルさんの意見に同調し、「この選挙の年に、私たちのコミュニティを政治的人質に使い、妨害しようとしています。世論調査でこの修正案は、優先事項のリストで一番下になっているんです」。

 「これは、明らかに、偏狭さにつけ込み恐怖を煽って票を獲得しよう、と作られた策略です。多くの共和党、民主党の上院議員は、差別を強要する道具として憲法を使うべきではないと思っています。しかし、この修正案を支持する共和党首脳部は、この問題を真剣に討論することに関心があるわけではありません。彼らの目的は、急進的な右翼党派をなだめるために、憲法を修正して彼らの個人的偏見を満たそうとしているのです」とPFLAG の代表、ロン・スキルラーさん。

 共和党の同性愛者組織「ログ・キャビン・リパブリカンズ」も、この法案を非難している。「共和党の上院代表は、法案通過の票が獲得できないことを認めているのです。しかし、国民の関心事に時間を費やす代わりに、アメリカの家族を二分し、貴重な時間を無駄にしています。これは醜悪な政治的見世物です。私たちがテロとの戦いに勝つために団結し、わが国が直面しているさまざまな問題に取り組まなければならないときに、アメリカの家族に亀裂を入れようとしているのです」と「ログ・キャビン・リパブリカンズ」代表のパトリック・ゲリエロ氏。

 5月に行われたギャラップ調査によれば、51%がこの憲法修正案を支持し、45%が反対した。

 憲法修正には、上下両院で3分の2の過半数と、3分の4の州議会の承認が必要になる。

 「今年は必要な票数が集まらないかもしれないが、これは一年単位の計画ではない。これからも取り組んでいくつもりだ」と共和党のアラード氏。

 「人権キャンペーン」では、今週(7月11日から始まる週)の火曜から木曜の間にはこの修正案が上院での投票に移るとみている。下院院内総務のトム・ディレイ氏によると、下院では類似の修正案の討論を9月にも始めるとのこと。

 この問題は先週月曜・7月5日まで上院の議題に上ってくる予定ではなかったが、木曜に突然共和党首脳部が持ち出してきている。

 この背景には、日曜日の前にメディア報道を獲得しようとの思惑があったとのこと。この日にはキリスト教原理主義者らがProtect Marriage Sunday(結婚を守る日曜会)を開く予定であった。

 また、生放送のテレビ番組、「Battle For Marriage」(結婚のための戦い)が日曜夜に、多くのキリスト教系テレビ局で放映されることになっていた。

 保守派のグループは日曜礼拝の機会を利用して、参加者に自分の上院議員が修正案に投票するよう電話やメールを送ろうと呼びかけるとのこと。

翻訳&記事の解説:ワタル
(ワタル:埼玉県在住/翻訳スタッフ)

 

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