同性愛者に敵対する保守派の闘争が世界で広がる

by ワタル

 ペルーからフィリピン、ポーランドに至るまで、米国を拠点とする保守派の団体は、続々と海外において中絶や家族計画の論争に加わり始めた。つながりのあるブッシュ政権からの追い風を受け、リベラルな相手に対抗することに熱心だ。

 その結果、今や米国の権利擁護団体は、他国の法律に影響を与えるために米国の援助金がどう使われるべきかを論議しており、世界中で文化戦争の論争を始めている。

 

 「私たちは国連や西ヨーロッパ諸国が変わることは期待していません。しかし、ブッシュ政権の今、中絶合法化反対者は、米国政府の中絶・性教育促進、また第三世界の人口抑制を阻止する絶好の機会だと考えています」とバージニア州を拠点とする反中絶派団体、“Population Research Institute”[人口研究所]のジョセフ・ディアゴスティーノさんは話す。

 米国の保守派は、長い間国連会議や国際NGO組織において活動を続けてきた、女性人権/中絶擁護団体の勢力に立ち向かおうとしている、と“Concerned Women for America”[アメリカを憂慮する女性たち]のジャニス・クルーズさんは話す。

 「NGOはとてつもないパワーを持っています。しかし、長年に渡り左派活動家の独壇場となっていました。このブッシュ政権の時期のみ、私たちのような右派がその独壇場に上がれるチャンスなのです」とクルーズさん。

 

 リベラルな活動家は、特に教育や仕事を通した女性の権利拡大の長期傾向が、世界各地で彼らにとって有利に働くだろうと考えている。しかし、同時に米国の保守派が海外において影響力を持ち始めたことも認識している。そして彼らのブッシュ政権政策への影響力から、それを脅威と感じる海外の権利擁護団体もある。

 「右翼NGOとブッシュ政権の協力関係は、中絶賛成派家族集団とクリントン政権の時の関係をはるかに凌いでいます。私たちは一つになれるような関係ではありませんでした」と“Catholics for a Free Choice”[自由選択のカトリック教徒]の代表、フランシス・キスリングさん。

 自国で保守的な社会政策を施行する権利が限られているブッシュ政権は、宗教右派から要求された国外支援への制約を実施し始めたと、キスリングさんは話す。例えば、いわゆる「地球規模箝口令」は、中絶賛成はもちろん中絶問題を議題として扱うだけの外国団体に、連邦の家族計画資金を援助することを拒否している。

 “Population Research Institute”[人口研究所]のような保守派団体は、国連の人口基金に対するアメリカの資金提供を差し控えるようブッシュ政権を説得するだけの力があると、敵味方の双方から見られている。論争中となっているのは、人口基金が激しく否定した、国連機関が中国での強制的な中絶に間接的に寄与しているのではないかという保守派の主張だ。

 「極右の人間は“ジャンプだ!”と言い、ブッシュ政権は“どれだけ高く?”と言っているようなものです」と非難するのは、人口基金への資金復活を支持するニューヨーク州選出民主党下院議員のキャロライン・マロニーさん。

 

 海外における現在の保守派の活動例には次のようなものがある。

 “Focus on the Family”[家族を中心に]、“Concerned Women for America”[アメリカを憂慮する女性たち]、“Family Research Council”[家族研究協議会]を含む有力な米国の数団体は、2007年5月にポーランドで行われる“World Congress of Families”[世界家族議会]の準備を手助けしている。

 主催者代表、イリノイ州ロックフォードに本拠を置く“Howard Center for Family, Religion and Society”[家族・宗教・社会のためのハワードセンター]のアラン・カールソンさんは「アメリカの保守派はポーランドを、リベラルで非宗教的な傾向のあるEUの中でもそれに与しない貴重な存在だと見ている」と述べた。現在のポーランドの新しい大統領は、中絶と同性婚に断固反対の立場を取っている。

 ペルーでは、“Population Research Institute”(PRI)[人口研究所]が、アメリカ国際開発機関とともに、地元の二つの団体を告訴した。これらの団体は、米国の基金を使用して経口避妊薬の合法化を支援し、アメリカの方針に反したとされている。両団体とも警告を受けており、PRIのディアゴスティーノさんによると、そのうちの一つは基金の一部を返還しなければならないとのこと。

 コロンビアでは、PRIが、同国の中絶全面禁止への法的抗議に反対する地元保守派に援助を行った。この抗議は残念ながら2005年12月の憲法裁判所で却下されたが、女性人権活動家らは、新しい訴訟を起こし、ラテンアメリカで中絶を全面的に禁止している3つの国の一つであるコロンビアの状況を変えようと計画している。

 いくつかの米国保守派団体は、フィリピンで係争中の家族計画法令に反対する示威運動を援助している。この法令は、子どもを2人までに制限する両親に対し財政的な奨励金を与えるというもの。これを行き過ぎた性教育の助長や、避妊具の入手につながると批判する者もいる。

 米国の保守派は、海外のHIV/AIDS予防プログラムの有効な方策として禁欲を強調するブッシュ政権の政策を強力に支持している。禁欲に焦点をあてる米国拠点の団体はアフリカでの予防運動のための補助金を受けているが、いくつかのケースで、専門的知識が欠けているのに政治的つながりが優先されている、と非難されている。

 

 両サイドの活動家は、海外における保守派の活動の興隆を1990年代中頃までさかのぼると考える。反共産主義の動きが衰えた後それに伴って、反中絶、反フェミニストの団体が主要な国連会議に参加し始め、その多くがクリントン政権に反対の立場を取った。

 そして今、ブッシュを大統領として、保守派は大きな力を得ている。“International Planned Parenthood's Western Hemisphere Region”[国際親子関係計画・西半球地域]の代表、カルメン・バロッソさんは、保守派はラテンアメリカにおいて、特に活動的だと語る。

 「彼らは非常に組織的で、ホワイトハウスとバチカンに多くの情報資源と強力な支持者を持っています。進歩的な法律が作られようとする大きな動きがあると、いつでもすぐに、それに反対する勢力を投入してきます。以前は、一つ、二つの孤立した活動でしたが、今は大規模になっています」。

 

翻訳&記事の解説:ワタル
(ワタル:東京都在住/翻訳スタッフ)

 

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